レポート第3弾です。学芸大学の粕谷恭子先生が講評や講義で話されたことをまとめていきます。
・授業では「英語度」を上げていくことが大切。そのためには、余計な日本語は入れない。自分が最大限英語を使えるような工夫を。
・教科化されても授業時数は年間70時間「しかない」。時間がもったいない。とにかく無駄をなくすこと。子供の反応に、返すことは大事だが、全部コメントしなくてもよい。
・歌について。いろいろと課題を与えて、聞かせる工夫をすることはよい。が、「何回聞こえた?」という課題なのに、「聞こえたら手を挙げる」という行為をさせると、「聞く」ことに「手を挙げる」という体の動きが入ってしまい、「数を数える」ことがしにくくなってしまう。体を動かしながら学ぶ(Kinesthetic learning)ことは大事だが、あくまでも目的・活動のゴールを考えることは必要。
・「気付き」は今回の学習指導要領でも強調されているところ。教え込んでしまう方が楽だが、とにかく我慢する。歌では、一行一行どう言うのか教えてしまうのではなく、何回も何回も聞かせて「主体的に音を切り出していくのを待つ」ことが大事。その過程の中では、ずっと教師が一緒に歌うのではなく、どこかの段階で子供だけで歌わせることがあるとよい。
・歌は教師にとって得意不得意があるし、発音が難しいものもある。無理して苦しくなるよりは、CDを使えばよい。過度に苦しむ必要はない。
・子供にも、歌の難しいところは無理をさせず、ふれなくてもよい。
・一つ一つの活動に・ふるまいに「意味」をもたせること。歌であれば「聞かせる」のか「歌わせる」のか、ねらいを明確にすることが大切。
・「日本語で知っている歌」は諸刃の剣。歌いやすいというメリットはあるが、英語の音になりにくくなるというデメリットがある。例えばドレミの歌。
♪Doe, a deer, a female deer
♪ド は ドーナツのド
英語詞だと、deerだが、どうしてもドーナツの「ドー」に引っ張られてしまうということがあったそう。(でも、いい歌ですけどね。)
・歌でもう一つ。英語版と日本語版では、歌詞が違うものもあるので注意。
例えば「森のくまさん」。(英語版も日本語版も、どちらも森の中でクマに出会い、そのクマにお逃げなさいとすすめられるのは共通していますが、主人公は英語版では男、日本語版ではお嬢さんですし、最終的にクマと主人公が仲良くなるのは日本語版のみです。)
音と意味を結びつけて聞かないと、意味がないので、ある程度内容がわかるように教えてあげることも大切とのことでした。(これは、文科省英語教育推進リーダー中央研修でも教わったことでもありますね。)
・今日の授業のテーマは「どこに行きたいか」。どういう設定だったら、「行きたい」ということになるのかとことん考えるべき。絵本の内容もうまく活用すべきだった(レポートその2参照)。関連させて4つの方位や国の名前を取り上げていたが、「ねらい」とはズレてしまっていた。duckになりきって、どこに行きたいか言わせるとよかった。声色を変えて、もっとduckになりきって言ってごらんなどとあれこれ手をかえ品をかえ、表現に触れさせることができた。とにかく、教師は何を考えて、どうふるまうのかを突き詰めることが大事。正解はない。その答えは子供にある。失敗もあってよい。それを考えずに、何となくでやってしまうことのないようにしたい。
・子供から「夏休みで行きたい場所」を出させたとき、意図的にHe/Sheも使っていた。次の学習指導要領でも入ってくる要素でもあるが、ちょっとごちゃごちゃしてしまっていた。板書には子供の発したI want to go to~.の文章が書かれている。でも、教師の口からはYouやHe/Sheも出てくる。「意味と音」、「音と(板書の)文字」が合っていなかった。だれがHeでだれがSheなのか、明確にしてあげないといけない。が、そもそも本時はI want to go toなのだから、あれもこれもと入れなくてもよかったのでは。ごちゃごちゃしてしまう。
・板書も教師の言葉と子供の言葉を分けて書き、構造的に使っていてよかった。が、板書は時間がかかる。一人一人を大切にするという意味ではよいが、全員分を書くと時間的にはもったいない。それよりはもっと音に触れさせたい。
・子供が「○○さんに聞こうよ」とつぶやいたときがあった。それこそが子供達自身で「聞きたがる瞬間」だった。それを捉えて、「じゃあ、聞いてみよう」とするとよかった。子供が聞きたくなる、言いたくなる瞬間を捉えることが大事。
・一人一文、自分の行きたい場所を言うので終わっていたので、例えば友達の言ったものの中で、自分も行きたいと思うものを一人ずつポンポンとテンポよく言わせてもよかった。
・よくただリピート練習させているのを見かけるが、意味を考えない単なる記号的反復練習になってしまうのでだめ。今回の授業では悪いリピート練習はなかったのでよかった。もしリピート練習をさせるならば、こういう方法が考えられる。子供達から出てきた行きたい場所を教師が一文ずつ言う。子供には、自分も行きたいなと思うものだけ繰り返させるとよい。リピート練習にも「心の動き」をつくることが大切。ただ、この場合、あまりポンポン進めると、機械的になるので、子供が選んだものについてはしっかりと受け止め、何かしらの反応をすることが大切。
・今回は、子供同士の活動はなかったが、なかなか放すとうまくいかないことが多いと思う。十分にinputをして、練習を積んだ上で放さないと、日本語でのやりとりになってしまったり、混乱したりしてしまうので注意。
(会場からの質問に対して)
・新教材について。かなり盛り沢山な印象。あまり「国から与えられしもの」のように、金科玉条のようにしてはよくない。文科省も「工夫してください」と言っている。絶対視することなく、学校・子供の実態に合わせて、整理して活用することが大切。もちろん、指導に当たっては、最低限知っておくべきこともあるので、そこは大変だろうけれども、せっかくなので英語と向き合い、楽しく取り組んでもらえれば。
・担任とALTの連携について。今回は石毛先生がお一人でされた授業だったが、もしALTと二人でやるならばどうするか、特に英語が得意でない担任はどうすればよいかという質問。
→やりとりを見せる。ALTが言ったことを繰り返す。子供が言ったことを主語を変えて繰り返す。反応するなどがよいのでは。Oh! You want to go to Okinawa. など。繰り返すだけで、授業内の英語は2倍になる。Inputをいかに増やすか。
・他の教科でもそうだが、単元には山がある。毎時間全力投球する必要はない。そのためにも、いかにコストパフォーマンスのよいことをするかが大事。モットーは「冷蔵庫のありもので家族全員分の(ある程度)おいしく、健康な夕飯をつくること」。めあてに向かって、一つ一つの活動の効果を最も効果的に効率的にしていくことが大切。
・粕谷先生の師である久埜 百合先生 (中部学院大学学事顧問) の講義を一度聞かれることをおすすめされていました。直近だと、こちらで話が聞けるようです。
0コメント