大泉小英語担当の石毛隆史先生の6年生の授業。この研修会のためなのか元々なのかわかりませんが、この日は登校日で久しぶりの学校といった感じでした。
授業前に大泉小の英語活動の考え方についても説明がありました。目指しているのは「英語に興味・関心をもち、音や文字を通して思いを伝え合う楽しさを感じることができるようになる」ことだそうです(文言が正確でないかもしれません)。
そこで、心がけているのが「Inputを大切にした授業」。話す前に、たくさん聞かせる。話す活動にすぐにいかない。急がない。急かさない。一つ一つ丁寧に積み重ねていき、子供達に自信をもたせることを大切にしているとのことでした。
ちなみに石毛先生が、東京学芸大こども未来研究所のHP「CREDUON」でも詳しくそのお考えが書かれているので、そちらもご覧ください。 http://www.codomode.org/creduon/vision/pg62.html
また、「Inputを大切にする授業」をつくるために、「聞く必要のある場面」「聞きたいと思える場面」を設けているとのことでした。
さて、授業ですが、通常の学期中ではないので、どこかの単元に位置付けているのではなく、単発の投げ込み授業でした。扱う表現はWhere do you want to go? I want to go to~.。wantは既習だった模様。1時間なので、I want to go to~.で自分の行きたいところを話すというのがゴールでした。授業の流れは以下の通り。
1)あいさつ・天気などを聞く
2)歌 2曲「1学期既習の歌」と「If you're happy」 handが何回聞こえたかなどを尋ねる。
3)絵本の読み聞かせ「10 Little Rubber Ducks」 Duckがどこに行ったかなどを尋ねる。方位にも触れる。
4)(残りの夏休みで)どこに行きたいかを言う。I want to go to Koushien.など。
5)歌
石毛先生は、とても優しく穏やかに授業を進められていました。子供達も安心して反応できる雰囲気がありました。歌は、無理に歌わせようとせず、歌えたら歌ってみてというスタンスでした。handが何回聞こえたかなど、聞くポイントをつくることで、自然に何回も聞くことになっていました。
絵本は、内容を大まかに捉えられればよいという発想で、やはり「聞く」ということを重視されていました。子供の理解を確認しながらゆっくり読まれていたこと、世界地図を出して、方位の言葉も関連させるなど、工夫がたくさんありました。
一つ気になったのが「絵本と本編の連携のさせ方」でした。duckは海に投げ出されて、それぞれどこかに行ったという話で、しかも動詞としてはgoではなくdrift(漂流する)でした。広ーい意味では「行く」という行為でつながるのですが、実際に今回ねらいたい表現“want to go to~”にはつながっていかないのが苦しいところでした。絵本はauthenticなものを使う方がよいとは思うですが、表現が難しくなってしまったり、うまく合わなくなってしまうので、本編とリンクさせるのが難しいなあといつも感じています(だからこそ文科省教材もオリジナル作品なのでしょうが)。
表現が完全に一致していなくても、内容がうっすら関連していればよいというのは、一つの案だと思います。ただ、今回で言えば、この絵本の話の流れ上、「行った」というようなニュアンスで捉えさせるので、そうすると、本来この授業で使いたい「行きたい」というニュアンスではないので、次の活動に移るときに混乱する可能性がありました。もちろん、そこまで大きな問題にはなっていなかったですが、なるべく英語の表現や語彙は、英語のままでニュアンスを捉えさせたいと思うので、そのためには表現に触れるときには自然な思考の流れになるようにしていきたいかなと。
では、どうすればよかったか、割り切って絵本は全く関係ないものを帯活動的に扱うか・・・などと考えていたところ、今回講師だった東京学芸大学教授の粕谷恭子先生がその解を示してくださいました。それは、絵本の地の文章をそのまま読まず、ストーリーもやや無視して、子供達に投げかけてみればよいとのことでした。つまり、duckがいろいろなところへ行きたいという話にしてしまう、というか、場面に基づいて、そう尋ねてしまうというものでした。具体的には、duck何羽かについて“I want to go to China.”などと紹介して、「じゃあ、このduckはどこに行きたいかな?Where does it want to go?」などと尋ねるというものです。子供達に考えさせて、そのduckになってもらい、“I want to go to America.”などと言いたい子に言ってもらえればいいですよね。絵本の絵をうまく活用し、本来の目標にしっかりとつながっていて、なるほどと思いました。絵本も何をねらうかによって、活用の仕方が変わるんだなと思いました。
粕谷先生は、他にも絵本を紹介してくださいました。目から鱗だったのは、日本の絵本でもよいということ。絵本の絵やお話の場面をうまく活用して、表現や語彙の導入をしたり、自然にinteractionするということです。以下はその一例だそうです。
↑What's this? で尋ねて、野菜の語彙を導入。そのあと、高学年ならばWhat vegetables do you like for Tempura?などと天ぷらの具材だったら何が好きかと尋ねるのが鉄板ネタだそうです。これが低学年だと、答えがさつまいもかかぼちゃばかりになってしまうので不向きとのこと(笑)。
↑こちらは名前のとおり「光の旅」と「かげの旅」が紙面で往復一対になっているそうです。往復で見え方が変わる妙もあり、絵本として面白いとのこと。建物の言葉が扱えそう。
粕谷先生は、ご自身もおっしゃっていましたが、私立小学校の英語教師として、たくさん試行錯誤されてきたそうです。ですので、とても現場の感覚に合ったためになるお話をたくさんしてくださいました。既に文量が長くなってしまったので、また改めて紹介したいと思います。
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